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舞台口紅を見て -その口に纏うものは-

舞台口紅 9日夜 13日昼・夜観劇

舞台「口紅」 OFFICIAL WEB

 

赤坂レッドシアターの会場の狭さや
携帯の電波がはいらない劇場に一度足を踏み入れたら逃げ場のない空間。
そこにうかぶスイミングスクールのスタッフルーム。
はじまれば芝居なのか日常なのか境目がわからなくなって2時間ずっと息苦しく頭が痛くなるような舞台でした。
これは、褒めてます。素晴らしい舞台でした。


人間は誰しも自分が可愛い。だからこそ身勝手だなって。
それぞれの本音や建前や間の悪さとかそれらが重なって踏み入れられたくない領域にそれぞれ無神経に踏み込み合う8人の絡みと縺れ。
観客は本音も建前も見栄も全部見てるけど逃げられないし何にもできない。とあるスイミングスクールに設置された固定された監視カメラの気持ちでした。
前田さんは子供を18歳の頃に産んでいるという流れだったんだけどスタッフがそのことを小馬鹿にしたりする場面だったり
オーナーの前ではにこにことした表情を見せるのにスタッフに対しては横暴な態度をとったりとか
そんなオーナーに対して愚痴をこぼすスタッフたちだったりとか。
これって私たちでも当てはまるに 自分たちの日常にすごい近くて本当に気持ち悪くなるようなそんな気持ちでした。

 

物語は日常が淡々と居心地悪く進んでいくのですが
前田さんの息子であるかずきの溺死をきっかけに死の連鎖が続きます。
それが劇的に何かがあるわけじゃくて
そもそもそれがきっかけなのかわからないけれども
春日の元教え子だった関口さんがはっきり明言されていないけど自殺してしまったりだとか
下平の同級生である飯塚が地雷で吹き飛んで死んだ知らせがはいったり
阿部さんの大学の同級生が自殺未遂をしたり。
そして様々な死の中でラストシーンで前田がいじめていたアイザワチナツの死が引き出されるんですよね。
でも別にどの死もつながっていない。全部見えてる観客側だけが連鎖しているように見えるのかなって思うと…なんだかしんどくなります。
人の死ってこんなにも身近なんだと あのスイミングスクールの一角しか見えてないのにほかのところまで見えて それがぞっとする。底知れぬ居心地の悪さ。
そして他人の死なんて、みんな忘れるんだなぁと思ってそれがすごくリアルでした。

中島保 という 『中』も『島』も『保』もどれも温和でみんなの中和剤になるような名前だしそういう性格に一見みえるのだけど
実は彼が一番8人の関係をややこしくしているような 搔きまわしているようにみえて
一番怖い人だなと思いましたし
だからこそ石田隼が主演でこの役だったのだと思い知られたような気がします。
テニミュの時に隼君を好きになったのは不動峰公演でのリョーマを手当てするシーンで。
その時の視線とか仕草の美しさとかそういうお芝居をするところに魅力を感じたので
今回の口紅でそういう繊細な演技というか『芝居してないように』みせるお芝居がすごいというか
舞台の上にいるのが役なのか隼くんなのか境界線がわからなくなるくらいに入り込んでいて引き込まれました。
ラストシーンで前田さんが「中島君にはこの気持ちわかってもらいたくて」って言われた後に
考え込んで一息置いて「クラス会やろうよ。俺、幹事やるからさ」なんて言っておきながら
「君だって人殺したじゃないか」って突き放すのが本当に怖いんですよ。恐怖。
「俺だって忘れてたから」っていうように中島自身も忘れていて
でも前田に出会ったことが引き金で思い出して でも言えずにいてずっとため込んで
それがラストシーンで爆発したように見えました。
すごく身勝手で一番怒らせてはいけないなと。淡々と怒りを滲ませながら前田に八つ当たりのようにして
最終的にお昼ご飯をとるっていう…。
日曜日の夜見たこのラストシーンが胸がえぐられてなんだかよくわからないけどしんどくなって
涙がぼろぼろに出て頭痛がひどくなって地獄のようだなぁーってなりました(褒めてます)
生きるための行動をとる中島をみてまたきっと彼はアイザワさんのことも忘れるだろうし
前田さんのお子さんの死も忘れるんだろうなとぼんやり思いました。

人間って綺麗な面よりも汚いところが沢山あって
綺麗に見せるように取り繕って 言葉に色々纏って刃のように振りかざしながら生きていて。
それが『口紅』だったのかなと個人的には感じました。


内容よりも石田隼君の話を沢山してしまうのですが
私は彼がお芝居をやって舞台の上とか映像で生きていってほしいし
それがいろんな人の目に触れてほしいなぁと口紅をみて確信しました。
テニミュの時の仲間たちが見に来ては「刺激になった」「うらやましい」「芝居がしたくなった」「悔しい」
って言ってるのをみて本当に幸せというか
ずっと一緒にお芝居してた人を見てすごいって思ってもらえる演技だったのだと
ファンとしてすごくうれしくて、隼くんはお芝居で食べていけるような人になってくれると思いましたし
応援していくうえでテニミュ卒業後の一発目の舞台のお仕事が
すごく素敵で面白い舞台で、引き込まれる演技をしてくれて幸せ者だなぁと感じています。


カレンダーイベントの時に語った豊富が「夢を現実に」だったので
彼の夢が現実になれるように応援していけたらいいな、なんて思いました。
口紅を見ていろいろ考えさせられて
間違いなく私にとって忘れられない舞台でした。

地獄のような舞台、とても面白かったです。
ありがとうございました。

 

2月にはまた赤坂レッドシアターに置いてきた魂をとりに行くので今から楽しみです。

孤島の鬼ー咲きにほふ花は炎のやうにー (@kotounooni2015) | Twitter